樋原伸彦のコラム「政治 x ファイナンス」 Vol.1
政治が経済を決める!
樋原 伸彦
政治、もっというと選挙や国民投票の結果が、金融市場、更には経済状況を、大きく左右する場面が最近増えてきている。夏前には、ご存知の通り、イギリスのEU離脱(Brexit)を決する国民投票があり、金融市場は大きなショックに見舞われた。また、来週、11/8(火)には米国の大統領選挙がある。本コラムでは、政治の機微が金融・経済状況を、実はかなり決定してしまっているのではとの推測のもと、政治と金融・経済の関連について、感じていることを自由にかつ緩く述べていきたい。
まず、米国の大統領選挙だが、ヒラリーの勝利は動かなくなったような気がする。トランプとヒラリーという、米国内では知名度は抜群だが好感度が共にかなり低い者同士の対戦となった。オバマの8年間が、就任当時の非常に高い高揚感に比べて、期待外れに終わりつつあるなかで、本来は共和党が勝つ選挙だったはず。共和党がプロの政治家を候補に出来なかった(つまり、勝てそうなプロの候補を発掘出来なかった)ため、ポピュリズム的な人気はあるトランプに賭けざるを得なかったところに、共和党の根本の敗因はあると思う。
しかしながら、トランプのポピュリズム的な人気は実はあなどれず、ヒラリー陣営もかなり神経質になっていたはず……。一回目のPresidential Debateでヒラリーが完勝するまでは。
是非、日本のメディアなどの間接的な報道だけではなく、この時代、web sitesでいくらでも生の情報に触れられるので、例えば、下記からでもDebatesのビデオをご覧になって欲しい。
http://www.uspresidentialelectionnews.com/2016-debate-schedule/2016-presidential-debate-schedule/
9月26日にあった一回目のDebateはライブで観るチャンスがあり、またその直後に西海岸に出張したので、そのDebateでの二人の勝ち負けを論評するCNNなどのテレビ番組の洪水のような報道に触れることができたが、ヒラリー・サイドのかなり意図的な戦略が功を奏したという印象が強かった。突然、1996年(!)のミス・ユニバースのベネズエラ代表にトランプが暴言を当時吐いた、というのが民主党サイドが持ち込んできた「材料」だった。メディアもまた、その女性のたどたどしい英語のインタビューを垂れ流した。既成政党としての民主党が情報戦で仕掛けた戦い方が今回はまんまとはまった感じだ。
ここからは推測だが、ここまでしても、トランプを大統領にしては大変困る理由が米国のエスタブリッシュメント層にはあるのだろう。(あるいは、万が一なった場合は、別の考えたくない手段に打って出るのかもしれない。)
ヒラリーが女性初の大統領となり、これから4年あるいは8年、またクリントン家の執政に米国はなるのであろう。TPPに反対するような米国大統領のもとで、今後4年あるいは8年の間、米国経済はどうなるのであろうか。テロやBrexitなどで、現在は欧州経済のほうがよりリスクが高まっているが、米国経済の大統領選挙後の中期的なリスクもあなどれない気がする。
(了)