記事によると、 1000億円のうち国立大学の合計で550億円の投資予算が第一号ファンドとして用意された中で5年間で133億円しか投資できなかったようです。100億円ちょっとという額は、大企業のCVC投資ファンドで言えば、大きめなファンド一つというサイズであり、あれだけ鳴り物入りで導入された政策としてはさびしい限りですね。さらに、133億円中56億円を占める東大のファンドの9割はファンド・オブ・ファンドでの投資(スタートアップへ東大ファンドが直接投資するのではなく、民間VCへLPとして資金を提供している)であるとのこと… とすると、約50億円は民間VCへのLP出資ということになるわけで、他の3大学が全くファンド・オブ・ファンドでの投資をしていないと仮定しても、直接スタートアップに投資されている額は83億円しかないことになりますねえー。
現状は、「投資してないじゃないか」と文科省は不満なわけですが、不満になる理由にはは他の可能性もあったわけです。例えば、やたら投資してもほとんど投資が失敗した場合は「公的資金を使っているのに、ちゃんと選んだのか」となるし、この公的ファンドの導入の結果、民間VCの投資がcrowding outされれば、「民間圧迫してるじゃないか」となるわけで、国立大学VCファンドのご担当はどういう投資方針で臨むのか極めて微妙でつらい立ち位置かと。
根本理由は日本の場合スタートアップ自体の数が他国比極端に少ないという点なわけで、第1号ファンド550億円の投資状況がここまではっきりしてしまったからには、残りの450億円はもう使用しないほうが賢明でしょうねえ。このまま継続すれば、大学側は、とにかく投資しなきゃ、というモラルハザードに陥る可能性が極めて高く、その結末はより深刻になるかと。
最後に、記事ではあまり強調されていませんが、550億円のうち、「運営経費を除いた投資予算508億円」とある通り、その差額の42億円は経費であり、主にこの官製VCのキャピタリスの人件費になっていることは注意しておきたいところです。直接スタートアップに投資した金額が83億円なのに、経費が42億円なんですよねえ。通常、民間VCの管理報酬は年率で2%から3%なんで…長くなりそうなので、とりあえずそろそろ筆をおきます。
(了)