サッカーというスポーツは、いくら個々のタレントが豊富でも勝てないし、また、組織の戦術だけでも勝てないわけで、ビジネス組織あるいはあらやる組織の課題が満載でとても興味深いです。組織の能力(capabilities)は、個人のそれと違って、次の3つの要因が複合的に絡んで決まってきます。1)個々のプレーヤーのタレント、2)戦略、組織内での手順設定方式、3)リーダーの資質、上位組織の経営能力、です。この3つのファクターでその組織の勝敗は決まってきます。
今回のW杯日本代表は、まず、ハリルの解任(及び西野監督の就任)ということで、まず3)に手をつけました。続いて、今日、ようやく、1)の個々のタレントが最終決定。そして、昨日のガーナ戦あたりから、2)の戦術、どういうフォーメーションで戦うべきか、かという点について議論が大盛り上がりです。今までの4バックなのか、3バック(5バックと言ってもいい)なのか、みたいな。
今回については、ガーナ戦の前に23名を最終決定しておくべきだったでしょうねえ。だいたい、3名しか落とせないわけなので、ガーナ戦ではメンバー選考の要素は完全に排除すべきだったかと思います。もしそうしていれば、この試合の使用価値はもっと高まってたかと思う。選手にしてみれば、落とされる3名にならないために、チームとして試合自体に負けるリスクを取ってでも自己アピールせざるを得ない環境に追い込まれてしまいました。下の記事では、まず選考から漏れないと思われていた本田でさえ、…..何にも縛られぬかのように自由に動いた…..ようで、彼の発言も「点を取れる場面があったので悔しい」。武藤、香川、柴崎も、とにかく自分で点を取れればラッキー、というプレーで、当たればもうけもの的なリスクを取っていた感じでした。
W杯の予選の試合は、とにかくW杯の出場権を取らないとW杯という選手品評会への参加の道が閉ざされてしまうわけで、個々の選手もfor the teamに徹するincentivesが強かったはずです。あのオーストラリア戦はそうそう観れないパーフォーマンスだったと思います。しかし、かなった後は、そのincentivesは弱まっていかざるを得ない。出場権を獲得した後のハリル体制での試合がうまくいかなかったのは、この要因も大きいかと。西野監督がガーナ戦後「トライはできた」と発言していましたが、それは残念ながら、チームのトライではなく、個々の選手にとってのトライだった気がします。
本日メンバーは固まったわけで、ここから6/19のW杯の初戦コロンビア戦まではfor the teamのincentivesは高まるはずです。なぜなら、負けなければ決勝トーナメントという品評会に参加できる可能性が出てくるから。ですので、コロンビア戦に負けてしまうと、個々のプレーヤーは自分のためのリスク・テイクに走ってしまい、またブラジルW杯と同じような試合を我々は見せられることになってしまうかも…
コロンビア戦に負けないような2)の戦略の部分を西野監督はあと約3週間で探し出せるのか、そこがKeyかと思われます。