良記事。このような分析も含めた記事というのが、なぜか日本の新聞には欧米の新聞よりこれまで極端に少なかったんで、こういうのは大変好感が持てます。
ここの地図に載ってる各都市は、いわゆるEE(Entrepreneurial Ecosystem)と言われ、スタートアップ企業が活動しやすい環境を提供しています。なぜ、あえて「都市」ではなく「エコシステム(環境系)」という表現をみんな使いたがるのか?それは、都市というコンセプトだけでは内包しきれない、労働市場のこと、資金提供機能の状況、企業間の繋がり等々についてもエコシステムという単語は含意できるからです。
90年代からEEとしては長い間シリコンバレーの一人勝ち状況でした。そのためか、記事でも触れられている通り、特にICTセクターにおいては、シリコンバレーみたいなEEは地球上に一つあればいいんじゃないの、という議論もありました。つまり、いけてるスタートアップ企業はすべてシリコンバレーに集まっちゃった方が、世界経済的にも効率が良くて、社会厚生のレベルが上がるでしょ、という議論です。この議論の背景には、90年代以降、多くの政府がシリコンバレー・コピー政策をさんざん試みたものの、ほとんどは成功しませんでした。欧州もまさにそうで、日本だけうまくいかなかったというわけではありません。
そんな中で、米国以外でも、21世紀に入ってまずテルアビブがEEとして熟してきました。さらにここ10年くらいで、スタートアップが生まれないという意味では日本と同じような見方をされていたドイツですらベルリンがEEとして登場、規模及び質の面でどの都市もまだまだシリコンバレーの背中は遠いですが、そいう動きが出てきています。EE出現の条件は、私見ですが、1)経営陣にどのくらい外国人が関わっているか(経営のダイバーシティー問題)、2)スタートアップが自らの製品・サービスの市場をどれだけ世界大で考えているか、3)EEの中にスタートアップから大きく成長した新興企業で資金提供及び人材提供でEEの核となる「コア企業」がいるか、の三つだと思っています。
さて、日本の都市でEE候補はどこになるのでしょうか。本記事では、福岡に対する期待が述べられています。上記の三つの条件では、特に1)経営陣のバックグラウンドの国際性、が重要と僕は考えています。それが2)及び3)を促す必要条件にもなるかと。政策担当者の皆さんには、1)を実現できるように知恵を絞っていただけないかなあ、と思います。そして、EE候補間での健全な競争を促すことも重要と思います。(了)